別の人のこと
どうして息子は怒ると壁を殴るのですか?
ドアに穴があいていて、手が腫れています。階段の横の壁という日もあります。本人は、やった覚えがないと言います。
先に、いま連絡できるところを置いておきます。読み進める前で構いません。
いま危険が迫っている場合は、119番に電話してください。当てはまるかどうかを自分で判断する必要はありません。
よりそいホットライン、0120-279-338。24時間、どんな内容でも受け付けています。岩手・宮城・福島からは0120-279-226。
自殺予防いのちの電話、0570-783-556。毎日10時から22時まで。
ほかの相談窓口は、支援情報検索サイト shienjoho.go.jp/telsoudan.html にまとまっています。
このページは、こちら側の話です。息子がどういう子かは決めません。それは、ここでファイルを開いたことのない、まだ育っている途中の人についての判定です。書いてあるのは、人ではなく物を殴る子のことと、親が実際に手を届かせられる場所のことだけです。
いま見ているのは、実際には何ですか?
小さなことがうまくいきません。出かける話に断りが出た。試合に負けた。来るはずの連絡が来なかった。それから二階でどん、という音がして、あとで手洗いに行く途中、手探りで穴を見つけます。
そのあと本人は、静かで、すまなそうで、どこか変です。頭が真っ白だったと言うこともあります。なぜか分からないと言うこともあります。自分でドアを直して、何も言わないこともあります。
拳が何を殴らなかったかを見ます。こちらではありません。きょうだいではありません。犬でもありません。壁は、この家の中で唯一、殴り返してこず、誰にも言えない相手です。その選択は、どこかで、速く、行われています。見ておく価値があります。
[現場観察]
穴があいた日を、分かる範囲で日付と時刻で書きます。直前に何があったかは一行で足ります。
同じ行に、拳が向かった先と、向かわなかった先を書きます。壁、ドア、机。人には向かっていない、という行が並びます。
三回そろうと、手元にあるのは心配ではなく記録になります。
壁は、何をしているのですか?
この書庫には、場面より大きく届く怒りについてのファイルがあります。走らせている本人に向けて書かれていて、このページの下に置いてあります。このページは、それが息子のファイルだとは言いません。廊下からでは、誰の内側も見えません。
言えるのは、よくある形です。殴る数秒前に、熱と、速くて固い鼓動が来ます。体は、その高まりに動作を一つ付けたがります。壁は、他の誰にも代償のかからない動作を一つ渡します。そのあと短い安心が来て、それから、こちらが手探りで見つける穴が残ります。
頭が真っ白だったと言う子は、まさにそれを言っている可能性があります。メモを取る部分より速く、並びが走りました。これは説明で、言い逃れではありません。このページは、本人に熱の来るのを見る練習を教えられません。こちらの側で何に手が届くかを言えるだけです。
拳は、傷つかない唯一のものに入りました。それは選択で、速く行われました。
これは、何の話ではないのですか?
出かける話でも、試合でも、連絡でもありません。その一つひとつを全部さばいても、次の穴は新しい小さなことを見つけます。さばき方が下手だったのではありません。
親を尊敬しているかどうかの話でもありません。石膏ボードは、こちらへの伝言ではありません。パテを持って立っていると、そう感じるとしてもです。
こちらが同じ年頃に何をしたかの話でもなく、分類の話でもありません。この書庫は誰の中にも何も名づけず、十四歳の中にも名づけません。その問いが頭にあるなら、それはかかりつけの医師との話です。
そして、こちらが直すものではありません。誰かの並びを代わりに走らせることはできません。外出禁止にする、穴を塞ぐ、落ち着けと十回言う。そのどれも、殴る前の数秒には届きません。
こちらの体では、何が起きていますか?
どん、という音のとき、自分の中で何が起きるかを見ます。胸がどきりとする。顔が熱くなる。顎が固まって、階段を速く上がりたい引きが来ます。
[仕組み]
体のサインは、どんな判断よりも先に来ます。階段の下に立っているこちらの体にも来ています。
そのサインと、こちらが何をするかのあいだに、数秒あります。このページの中で、窓がこちらの手元にあるのはそこだけです。
息子の体の中の窓は、息子のものです。こちらの側でも、親子の会話の中でもありません。
階段を上がる速さは、その数秒で決まります。速く上がった回と、一度座ってから上がった回で、二階で起きることが変わります。
こちら側にあるのはどれですか?
まだ家にいる思春期の子は、成人した子どもではありません。家を回しているのはこちらで、家の中の全員の安全を守るのもこちらです。本人も含めてです。
待てます。最初の二分は待ちません。火のついたばかりの並びはメモを取らず、そこに向けた説教は、誰も聞いていない説教です。手を見て、短い一文を言って、残りはあとにします。
使える一文はこれです。音は聞こえた。手を見せて。壁のことは明日話そう。そして、そのとおりにします。壁のことは明日話します。
線を引くことと、落ち着いていることは、同時にできます。穴は直す、直すのは一緒にやる。一度だけ、音量なしで言って、そのとおりにします。
穏やかな日に、聞けます。平らな質問を一つだけ。その直前、体の中で何が起きてる。なぜ、ではありません。答えられる子もいます。まだ答えられない子もいて、分からない、はいまのところ完全な答えです。
こちらの直しを、声に出してできます。さっき階段の下から怒鳴った。あれはこちらのものだった。親が自分の怒りを自分のものとして口にするのを聞いた子は、どんな説教からも学べないことを学びます。
[実地課題]
二週間、起きた回を書きます。学校のあと、部活のあと、夜遅く、連絡のあと。
誰が悪いかではなく、何が前にあったかを探します。
一つ、こちらのものではないことも書いておきます。どのくらいの速さで変わるか。それに日付をつけられるページはなく、つける人は推測しています。
誰かに相談するのは、いつですか?
手を痛めているなら、穴と穴の間隔が縮んでいるなら、拳が人に向かったなら、かかりつけの医師と話します。睡眠か、食事か、学校がそれと一緒に変わったときも、ただ自分が落ち着けないときも、同じです。
何かがおかしいと確信してから聞く必要はありません。息子が壁に拳を入れて、頭が真っ白だったと言います、と聞いた医師は、仕事にできる一文を聞いています。
息子の内側で何が起きているかについての問いは、すべてその医師のものです。このページは答えませんし、パターンについてのページはどれも答えるべきではありません。
読んでいるうちに自分のことだと思ったらどうしますか?
この書庫には、怒りが場面より大きく届く本人についてのファイルがあります。読んでいる人に向けて書かれていて、息子についてではありません。
同じ年頃に、何かに拳を入れたことがあるなら。自分の熱が、いまも息子と同じ部屋で上がるなら。そのファイルは自分のものである可能性があります。それは怒りのパターンという名前で、この家の中で直接取り組めるパターンはそれです。
他人の回路には手が届きません。自分の回路には届きます。
このファイルに届く質問
息子が壁を殴ったとき、どうすればいいのですか?
まず手を見て、他の誰も殴られていないことを確かめます。それから待ちます。短い一文を言って、穴はあとで一緒に直し、穏やかな日に、その直前に体で何が起きるかを聞きます。拳が人に向かっていたなら、上に置いてある番号です。
どうして話す代わりに、壁を殴るのですか?
息子の下に何があるかは、このページには言えません。よくある形は、熱と速い鼓動が、動作を一つ付けたがることです。壁は、他の誰にも代償のかからない動作で、話すのは殴るより遅いです。
頭が真っ白だった、と言います。本当ですか?
メモを取る部分より速く走った並びの、正直な説明である可能性があります。言い逃れではなく、判定でもありません。気になるなら、聞く相手はかかりつけの医師です。
壁に穴を開けたら、罰を与えるべきですか?
落ち着いて線を引きます。穴は直す、直すのは一緒にやる。音量と、一週間の冷たさは、もう熱のありすぎる家に熱を足します。一度だけ、音量なしで引いた線も、線です。
壁を殴る息子のことを、心配したほうがいいのですか?
落ち着いて見る、というくらいには、はい。学校、部活、きょうだい、付き合っている相手、画面の中、家。穴の間隔が縮んでいるなら、人が殴られたなら、自分が落ち着けないなら、かかりつけの医師と話します。
どん、という音を聞いたときの、こちらの体のサインは何ですか?
胸がどきりとする、顔が熱くなる、顎が固まる、が多いです。動く数秒前に来ます。その隙間が、階段の下から怒鳴る代わりに別の動きを選べる場所です。
壁を殴った直後に、何と言えばいいのですか?
ごく少しだけです。音は聞こえた。手を見せて。壁のことは明日話そう。そして、そのとおりにします。最初の二分に向けた説教は、誰も聞いていない説教です。
息子がこんなに怒るのは、私のせいですか?
それは判定で、この方法は判定を出しません。本当なのは、こちらの反応が、この家の中で変えられる部分だということです。自分の怒りを声に出して自分のものにする親は、どんな説教にもできないことを教えます。
息子には何か問題があるのですか?
この書庫は誰の中にも何も名づけませんし、ここでファイルを開いたことのない思春期の子の中には、なおさら名づけません。その問いが頭にあるなら、ページではなく、かかりつけの医師のところへ持っていきます。
壁ではなく、人を殴ったらどうしますか?
そのとき、話はこのページの外に出ています。今日のうちに動いて、上に置いてある番号を使います。自分の子どものことで、親自身がかけて構わない番号です。
このパターンのことを、息子に説明したほうがいいのですか?
しません。親から自分のことを説明された思春期の子は、どれほどやさしく言われても判定として聞きます。自分の反応に取り組み、穏やかな日に平らな質問を一つだけします。本人が自分でファイルを探しに来たとき、ここにあります。
入口
息子のファイルは、こちらからは開けられません。開けられるのは、同じ家の中で走っている自分のファイルだけです。九つの記録は日本語でそろっています。
日本語で読めるものを見る →9つのパターン · 4つの扉 · ひとつのファイル